エヌ氏と酒を呑みながらヨモヤマ話をしていた時の事です。
エヌ氏の子息が「大学に行く意味が分からない」と言っていて、親子で激論したという話になりました。
確かに、改まって考えてみると高度成長時代の残滓に青春を過ごしたエヌ氏の世代では、一流高校⇒一流大学⇒一流企業というレールがあって、大会社に入って出世すれば良し、出世できなくても無事に勤め上げて、「マイホームと退職金と年金、孫に囲まれて豊かな老後」というライフモデルが存在しました。
しかし、当時の若者は、社会や親に決められたレールに乗ることに抵抗し、学生運動やフォークを通じて反体制を叫んでいましたが。。。(今となっては「レールがあっただけマシ」という気もします)
エヌ氏と二人で、大学時代で何を得たのだろうと振り返って考えてみると、一つには今も付き合いのある得難い友人達、もう一つは専攻分野の知識(仕事レベルで考えれば、教養程度の知識ですが)というありきたりの話に落ち着きましたが、中学や高校時代とは違う、大学時代(19歳~22歳)と言うタイミングだったからこそ感じる事のできた、何かがあったとエヌ氏は言います。
大学生(19歳~22歳)という時代の特性
中学は一流高校に入るためのステップ、一流高校は一流大学に入るためにステップ、一流大学は一流企業に入るためのステップという既定レールの上で、中学や高校時代の思い出は、時に甘酸っぱく、時に残酷で、触れると痛みが伴う傷の様な生々しさがあります。
大学時代は、学生という区切りの最終段階、企業に就職するまでのモラトリアムな期間で、多感な時代の生傷に、薄皮が覆い始めた時期の様に思えます。
多感な時代には痛々しい事も、薄皮の時代では、痛みを感じながらも少し冷静に対処する事ができ、それ故に、外界の刺激に拒否反応を示しがちな若い感性が異物を素直に受け入れる場合があるとエヌ氏は言います。
エヌ氏の心に『地の塩』が舞い降りたのは、大学の入学式でした。
『地の塩』ということ
エヌ氏は1年間の浪人生活を経て、カトリック系の私立大学の文学部に入学しました。
基本的に理系と思われるエヌ氏が文学部に進んだのは、エヌ氏が小学校に上がる前に、エヌ氏宅に托鉢で立ち寄った修行僧がエヌ氏を見て、「将来、この子はペン一本で生きていきます」と言ったという話が頭に残っていて、いつの頃からか、作家やコピーライターになりたいという希望をエヌ氏が持っていたからだそうです(大人は多感な少年に滅多なことを言うものでは無いかもしれません。。。)
苦手な英語を克服して、ようやく合格できた大学の入学式で、エヌ氏は大学長の祝辞を聞きます。
それは、新約聖書の有名な山上の教えからの言葉でした。
「あなたがたは、地の塩である。(中略)あなたがたは、世の光である。(中略)人々があなたがたの良い行いを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。」マタイによる福音書 第5章13節~16節
学長は、新たに学窓に集った若者たちに、「皆さんは此の大学で学び、『地の塩』となり、これからの人生を生きて欲しい」というメッセージを贈りました。
これが、多感な時代を経て、薄皮が覆い始めたエヌ氏の心にスッと入ったという訳です。
ご存知のように『塩』にはいろいろな機能があります。
①調味料(塩味が無い料理は味気なく、食事が進みません)
②殺菌・防腐作用(食物の殺菌・防腐のみならず、神性のお祓いにも使用されます)
③発酵調整作用(味噌や醤油の発酵を適度に進めます)
④血の臭みを取る(魚や肉の血臭を抑えてくれます)
などが主な機能として上げられますが、何れも普段は意識していなくても、実生活では替え難い、無くてはならない存在です。
聖書の教えは、『塩』の性質を踏まえ、「少数派であっても批判的精神をもって生き、腐敗を防ぐ塩の様に、社会・人心の純化の模範であれ」という事になります。
エヌ氏は、これまでの人生で、人並みの苦労をし、理不尽で不条理な事にも色々と遭遇してきました。
意図せずに人を傷つけた事もあっただろうし、悪戯や赤面するような恥ずかしいこともしてきたし、軽い気持ちで嘘(方便?)もついたことがあります。
しかし、人を陥れるような卑劣な行為や嘘をつかず、何とか今まで生きてこれたのは、この『地の塩になれ』という言葉が、心の奥底に生き続けていたからだとエヌ氏は言います。
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シニアライフ? ソルトライフ? 『地の塩になって心穏やかに暮す』
「シニア」と「ソルト」、語感として少し似ているような、似ていないような気もしますが、「生々しい現役世代」を経て、少し最先端から身を引いたからこそ、俯瞰して物事を見る事が出来るのがシニアの強みと言えます。
節約やインフレに負けない程度の投資+年金によって経済的な自由を確保し、夫婦二人でゴルフや旅行を楽しみながら、大学時代の友人Mの影響から好きになったクラシック音楽と、同じく大学時代の恩師であるK教授の影響で始めた美術館めぐりと絵画鑑賞を趣味として、心豊かに『地の塩』として生き、心穏やかに冥界に旅立つのがエヌ氏の希望という事でした。
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